障害でフェイスブックとインスタグラムが使えず、調べて買収も初めて知った。以下は豊福ジャンさんの記事
■Facebookは当初、マーク・ザッカーバーグ氏が大学2年次に所属していたハーバード大学の学生が交流を図るための「The Facebook」というサービスで始まりました。その後「同じようなサービスが欲しい」との要望に応え、アイビーリーグの学生、全米の高校生にサービスは解放され、2006年9月には一般公開されたことで、世界中の誰もが利用できるようになりました。
Yahoo!ファイナンス調べ
2018年8月3日時点でのFacebookの株式時価総額は4,287億ドルで世界の時価総額ランキングのなかで7位となっています。2018年は4月にFacebook利用者約8,700万人のユーザー情報流出問題などが判明して以来、Facebook株は一時期大きく下落し、現在も不安定な状態です。
2.Facebookの収益源
Facebookは収益のほとんどを広告収入により叩き出している会社です。売上高の約93%が広告収入によるものであり、2017年度の売上高は406億5,300万ドルとなっています。Facebookの広告収入の種類としてはデスクトップ広告、モバイル広告が大きな割合を占めています。その中でも約87.7%がモバイル広告によるもので、この割合も年々高くなっているのが特徴です。2017年度は広告収入が前年度比で49%増収、売上高も47%増収となっておりFacebookは安定的に成長し続けています。
広告収入の安定的な成長と関係しているのはFacebookのアクティブユーザー数の推移です。ユーザー数の推移としてDAU(1日あたりのアクティブユーザー数)とMAU(1ヶ月あたりのアクティブユーザー数)があげられます。2012年度から2017年度のDAU・MAUを見ると、共に右肩上がりで安定的に伸びていることがわかります。2017年度はDAUが14億、MAUは約21億となっており、2017年の世界人口は約76億人であることから、世界の約5人に1人が毎日Facebookを利用していることがわかります。
3.FacebookのM&A戦略
Facebookは2018年1月までに合計66社を買収してきました。株式公開の2012年5月18日までには、Instagramを含む29社を買収しており、株式公開直前の2012年5月には3件の買収を行いました。さらに株式公開日にはモバイルソーシャルギフトサービスを手がけるKarmaの買収を発表しました。
上場以前のFacebookの買収戦略は「優秀な人材の確保」という側面が強いものでした。2009年に買収した「FriendFeed」にはGmail開発責任者のポール・ブックヘイトやGoogleMap開発者であり、のちにFacebookCTOとなるブレット・テイラーがいました。このように上場前は優秀な人材の確保に力を入れ、Facebookの機能拡張を軸にM&Aを行なっていましたが、Instagram買収はこれまでのM&Aとは意味合いが違うものでした。Instagramの買収目的についてはのちの章で詳しく説明します。
上場後、2012年5月に上場してからのFacebookの買収戦略の軸には「モバイルファースト」が掲げられていました。実際に上場後の買収の約4割はモバイル関連であり、この買収戦略を通じてモバイルの収益を右肩上がりで伸ばし続けていました。そして2014年2月には最高額の190億ドルでスマホ向けメッセージサービス「WhatsApp」を、翌月に拡張現実のハードウェア・メーカーの「OculasVR」を20億ドルで買収しました。上場後のFacebookの買収にはFacebookから離れつつある10代を中心とした若いユーザーを取り囲むサービスの獲得と、AIやVRなど次世代テクノロジー企業の獲得が軸として行われており、「世界をつなげる」というFacebookの目標に向けて、Facebookと連携するプラットフォームの強化と、テクノロジーによる新たなコミュニケーションツールの開発を推進していることがわかります。
4.創業1年で1,000万ユーザーのInstagram
Instagramはケビン・シストロム氏とマイク・クリーガー氏によって創設されました。当初はユーザーが居場所、写真等のコンテンツを共有可能にしたソーシャルチェックインアプリ「Burbn」を開発していましたが、世界中の人が何をやっているかを写真で追いかけられるようにしたら面白いと考え、「Instagram」を開発しました。その後、2010年10月にApple StoreにてiOSアプリを公開しました。アプリを公開してから2ヶ月後には100万人ユーザーを獲得し、2011年6月には500万人ユーザーを突破。同年11月には1,000万人までユーザー数は拡大しました。
5.買収概要
5-1.M&Aサマリー
スキームとしては、最初に現金3億ドルとInstagramの社員以外の株主に普通株を約1,200万株の合計5億2,100万ドル相当が支払われ、9月の契約締結時にInstagramの社員に対して約1,100万株(約1億9,400万ドル相当)が支払われました。またFacebookはInstagramを買収する1年前に約1500億円相当の資金調達を実施していました。
5-2.Facebookの株価チャート
https://ussto.com/chart/FB アメリカカブドットコムBETAより引用・編集
FacebookによるInstagramの買収は10億ドル(約810億円)と発表されましたが、Facebookが上場した2012年5月から同年11月頃までで株価は上場時の約1/3にまで下落してしまいました。これを受けて同年10月に提出された四半期報告書では買収価格も7億1,500万ドル(約580億円)に変更されていたことがわかりました。
5-3.Facebookの買収目的
Instagramを買収する以前のFacebookは買収してきた企業を自社に統合し、被買収企業のサービスはその度に停止させることが多かったのですが、Instagram買収の際、FacebookCEOのマーク・ザッカーバーグ氏は「Facebookに統合するのではなくInstagramの強みや特徴を維持し、拡大していく」と述べていました。つまり今回のInstagramの買収目的として人よりもサービスの獲得を目指して行なっており、これまでの買収との大きな違いがあることがわかります。ここからInstagramの買収目的をさらに分解して見ていきます。
5-3-1.将来の競争企業の買収
なぜFacebookは、当時従業員13名で売上の出ていないInstagramを買収したのでしょうか。主たる理由としては、Instagramが将来の競合企業となる可能性を排除するためであったと考えられます。Instagramはサービス開始から2年弱でiOSアプリにおける利用者数を3000万人まで伸ばしており、これはFacebookがサービス利用者数を伸ばしたスピードよりもさらに早いものでした。そして買収前にInstagramが40億ドルの資金調達を行うと報道されたことによって、Facebookは本格的にInstagramが将来の競合企業になると考え、買収を急いだと考えられます。またGoogleやYahoo!がInstagram買収を試みていたことも影響したと考えられます。
5-3-2.モバイルアプリ広告のデータ収集
Facebookは当時あまりモバイルへの移行が進んでいなかった一方で、Instagramはモバイルアプリとして会員数を順調に拡大していました。ユーザーがモバイルへと移行する中で、Facebookはモバイル利用者のデータをより多く手に入れたいと考えていたため、Instagramの買収はその目的のためには打ってつけであったと考えられます。しかしやはり一番の理由は、将来競合となりうる企業を買収したかったという要素が大きかったように思えます。
6.FacebookとInstagramの買収シナジー
6-1.Instagramのユーザー数拡大効果
Instagram月間ユーザー数推移(2010〜2017)
https://find-model.jp/insta-lab/instagram-users-enrollment/ InstaLabより引用
この買収では、FacebookとInstagram双方に一定のシナジーがあると考えられます。まずInstagramのユーザー数は買収前時点で約3,000万人でしたが、2013年には1億人を突破、その後もユーザー数は非線形に伸び続け、2018年6月にはユーザー数10億人を突破しました。これはInstagramが世界のSNS市場でFacebookに次ぐ2番目に多いユーザーを獲得していることを表します(つまりSNS界のナンバー1、2をFacebookが有しているということです)。Facebookとのシナジーについては、買収直後から18ヶ月までの間にInstagramに流入してくるユーザーの約64%がFacebookからの流入でした。これはFacebook上でInstagramの写真をシェアしていることを意味しています。そしてFacebookは世界で最も利用者の多いウェブサイトであることから、 Instagramの利用ユーザーの増加に貢献していたと考えられます。
Instagram側からするとユーザー数の増加に加えて、売上を立てるための戦略はまだ発表できておらず、広告運用に関してのノウハウを持ち合わせるFacebookをバックに持つことは大きな魅力であったと考えられます。
Facebook側はモバイル分野での存在感を強化できることがあげられます。サービス自体はFacebookからInstagramは独立していますが、Instagram独自のソーシャルネットワークユーザーを獲得でき、ユーザーに関するデータを蓄積できることで、広告に活かすことができるという面でシナジーがあったと考えられます。
6-2.モバイル広告の利用
Facebookといえば収益のほとんどを広告により稼ぎ出しており、Facebook広告の適切な利用者にリーチすることのできる広告のノウハウを、 Instagramが活用できるという面で大きなシナジーが見込めます。実際に2015年ごろからInstagram広告は始まり、Facebook広告と同様に地域、年齢、性別、言語、趣味など非常に詳細なターゲット広告を行うことができ、届けたい層に広告を届けることができます。広告は通常のフィードと混ざるようにして表示されるインフィード広告であり、画像だけでなく動画も表示させることができることが特徴です。
7.現在のInstagram
2018年6月にInstagramの月間アクティブユーザー数は10億人に達しました。FacebookはInstagramの売上高を公表していませんが、2018年6月25日に発表されたブルームバーグ・インテリジェンスの集計データによると、 Instagramは向こう1年間で売上高が100億ドルを超え、Instagram単体の評価額は1,000億ドルになると言われています。
8.Instagram v Snapchat
Instagramと比較される競合企業としてSnapchatがあげられます。Snapchatは共有した写真や動画が10秒で消えるコミュニケーションアプリです。そのSnapchatを2016年8月、Instagramは徹底的に模倣した機能として「Instagram Stories」をInstagramのアプリ内に実装しました。Instagram Storiesは投稿した写真や動画などが24時間で消滅する機能です。このサービスをリリースして以来、Snapchatが追加する機能を徹底的に真似してきました。Snapchatがストーリー上に位置情報を追加したときに、Instagramも位置情報を追加できるステッカー機能を追加、カスタムスタンプの機能をSnapchatが始めるとそれも真似しています。Instagram Storiesは約1年でデイリーアクティブユーザー(DAU)が2億5,000万人を突破しました。また Instagram自体は2017年4月にDAUが7億人を突破しました。一方でSnapchatのDAUは1億6,600万人とわずか1年でInstagram StoriesはSnapchatを追い抜きました。
9.備考
今回のFacebookによるInstagramの買収はFacebookのマーク・ザッカーバーグCEOと創業時から現在までInstagramのCEOを勤めるケビン・シストロム氏の2人の間で、3回交渉したのみで決まったと言われています。というのもザッカーバーグ氏はFacebook全株式の28%、議決権の57%を持っており、ケビン・シストロム氏もInstagramの45%の議決権を有していたためです。Facebookの取締役会がこの話を聞かされた頃には事実上買収は決定しており、取締役会は形式的なものでした。関係者によると取締役会は「相談されたのではなく、言い渡された」と表現しています。またFacebookCOOのシェリル・サンドバーグ氏もザッカーバーグ氏からInstagram買収を進めたい意向を聞いていましたが、交渉には実際には関わらなかったと言われています。今回のFacebookのInstagram買収はザッカーバーグ氏の独壇場で行われたことがわかりますが、ここまでのInstagramの成長を見ると上場前の時期に当時最高額でこの買収を行うことを迅速に決断したザッカーバーグ氏の判断は正しかったと言えるでしょう。
ライター:豊福ジャン(M&Aクラウドリサーチャー)日本証券アナリスト協会検定会員補
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