なるほど!怪しい男向けエステはエロでなく健全な店の方が儲かる!私は意外にこういう店一度も行ったことないので逆だと思ってた。
■繁華街で「お兄さん、マッサージいかがですか」とカタコトの日本語で、中国系の女性に声をかけられた経験のある人は多いだろう。路上での客引き行為の取り締まりが厳しくなった昨今は、キャッチ女性の数こそだいぶ減ったが、彼女たちの職場「中国エステ」は80年代後半からどんどん増え続け、いまや全国津々浦々にまで広がっている。DOL特集「地下経済の深淵」第10回は、そんな「中国エステ」店の知られざるビジネスモデルに迫った。(ライター 根本直樹)
■氾濫する中国エステの実態は
風俗店からときどき不健全店まで
中国エステの大半は、表向き「リラクゼーション店」をうたい、「非風俗店」ということで営業している。だが、その形態は大きく二つに分けられる。射精に至るまでのサービスを行う風俗用語で言うところの「ヌキあり」店と、マッサージだけの「ヌキなし」店(業界では「健全店」と呼ばれている)だ。
しかし、どちらの形態にせよ、ほとんどの店がホームページなどで「当店は風俗店ではありません」とうたっており、外からはどちらなのか見抜くのは難しい。また、二つの形態にきっちりと分類できない曖昧さがあるのも“中国系”の特徴だ。
■ 「中国系のエステで、完全な健全店なんて少ないと思うよ」と語るのは、東京・池袋で、デリヘルチェーンを経営するO氏だ。
「表向きは健全店として営業していても、女のコが店に内緒でライトなサービスをして、勝手に別料金を取ったりしてる場合もあるし、口の固そうな常連客にだけは“特別サービス”があったりする店もある。恐らく、割合的には健全4、やや健全3、完全ヌキあり風俗店3ってところじゃないかな」
■法の抜け穴を突いたグレーな存在
「店舗」を武器に勢力拡大
要するに、健全店といっても、「健全寄り」と「風俗寄り」の二つに分かれるらしいのだが、その曖昧さの背景には何があるのか。
「中国系エステは、どちらであろうが、風営法に基づく届け出を出していない店がほとんど。かと言って、純粋なマッサージ店かと言えば、それも違う。国家資格の免許がないとマッサージ店と名乗ることができないから、法的に縛りのないリラクゼーション店として営業しているのがメンズエステ業界。法の抜け穴を突いたグレーな存在だから、警察も介入しづらい。そんなことでどんどん増殖していったんだ」(O氏)
増殖の理由は他にもある。
1998年の風営法改正により、店舗型性風俗店の新規開業に大きな規制がかけられ、性風俗店の多くが無店舗型であるデリヘルに移行したが、グレーな存在である中国エステは、「店舗」という強みを武器に、勢力を拡大していったのだ。
そしてそれは、実質的に風俗店と変わらぬ店もあれば、完全な健全店もあり、“健全ときどき不健全”な店もある。それが中国エステの実状なのだ。
■ 健全店でも売り上げが
月1000万円に上る店舗も
「この手のお店の9割は、黒字だと思いますよ。普通にやれば、ほぼ赤字になんてならないんじゃないかな。だから、多くの中国人女性がエステ店を持ちたがるんです」
こう語るのは、都内中央線沿線のK駅近くで「健全店」を営む、ハルビン出身の陳雪華さん(仮名・43歳)。日本に住んで22年、エステ経営歴7年になるという彼女に、店の立ち上げから経営の実態まで、いわば「中国エステのビジネスモデル」について話を聞いた。
まず、陳さんが「9割は黒字」と言い切る理由は何か。
「何か特別なカラクリがあるわけじゃないです。お客さんがたくさんいるから儲かる。それだけですよ」(陳さん)
実は、中国エステには相当な需要がある、ということらしい。
「K駅周辺だけでも、10店舗近いエステ店があるけど、私の店だけで1日平均13~15人のお客さんがくる。客単価は1万円で、月の売り上げは最低でも400万円はいく。家賃や光熱費、女の子の給料を払って、私の手元に残るお金は、だいたい150万円くらい。これでも低いほう。私の店、ベッドが四つしかないから」と陳さんは言う。
その上で陳さんは、「もっと大きい店なら毎月600万~1000万円近く売り上げがありますよ。はっきり言って、エステは儲かるね。スナックとかパブなんかよりも、全然、利益率は高いと思います」と明かす。
■ 警察に通報されるリスクもないから
長い目で見れば「健全店」が儲かる
繁華街から少し外れた路地裏に建つ、雑居ビルの一室に陳さんの店はある。ビルの前に店名の書かれた看板が置かれているが、いわゆるキャッチ行為は一切行っていない。
店内では、コスチュームも選べる
「店を始めた7年前は、まだ警察が今ほどうるさくなかったので、キャッチを使っていた時期もあります。でも、警察から目をつけられたくないのと、常連客もついたことから、4年前からは一切やめました。新規客の集客はホームページと『エステナビ』などの専門サイトに出す広告だけです」(同)
では、なぜ「健全店」なのか。
「3ヵ月とか、半年間とか、短いスパンで見れば、ヌキありの方が確かに儲かります。でも、違法風俗店なので、周りの日本人の店からにらまれ、すぐに警察に通報され、潰されてしまいます。だから、長い目で見れば、健全店のほうが全然儲かると思います。マッサージをしていて気持ちよくなって、抜いてほしいって頼んでくるお客さんもいるけど、実はそれほど多くないです。それよりむしろ、リラックスして、女の子との会話を楽しみたいというお客さんが中心だと思います」(同)
とはいえ、本当に陳さんの店では、健全ではないサービスが行われいないのだろうか。
「以前、女の子が勝手に風俗的なサービスをして、ネットで噂になってしまったことがあるんです。そうなると、エッチ目的のお客さんが大勢押し寄せ、『あのコはサービスしてくれたのに』などと文句を言ってきたり、中には警察に通報したりする人も出てきます。だから、大きな問題になる前に、すぐにその女の子をクビにして、その後もそういうことがないように常に気をつけていますね」(同)
■ 立ち上げの背後には
丸ごと請け負う中国マフィアの影
では、それだけ儲かるエステ店をオープンさせるには、どれくらいの費用がかかるのだろうか。
「立地にもよりますが、私の店の場合、全部で300万円程度でした。新宿や池袋などの大きな繁華街では1000万円くらいかかるみたいですが、沿線の駅付近なら、こんなものですよ」(同)
その内訳はこうだ。
店舗入居の保証金(家賃15万円×8ヵ月分)が120万円。クロス張替えなど部屋の内装費用20万円、簡易シャワー設置30万円、看板10万円、ベッド4台、シーツ、カーテン、タオル、マッサージ用オイル、観葉植物など備品一式で50万円、ホームページ制作2万円(エステ専門サイトへの登録が条件)、在日中国人向け新聞での求人広告(4回セット)が3万円、求人サイトへの出稿が3万円(4週)、予備費50万円などで、ざっと288万円也だ。
「日本人の業者に頼んだら、この倍はかかると思います」(同)
今どき、在日中国人女性がエステ店をオープンさせるのは、非常に簡単だ。内装から備品、看板制作、ホームページの制作に至るまで“セット”で丸ごと請け負う、中国系の「エステコンサル業者」がいるからだ。
「そういう業者は、たぶん、ちょっと怖い中国人がやってると思います」(同)
警察に準暴力団指定を受けている、中国系の不良集団「チャイニーズドラゴン」のメンバーH氏も言う。
「あれは、俺たち中国系グループのシノギの一つだよ。ヤクザみたいに一軒一軒からミカジメ料取るのも面倒だから、コンサルって形で店に食い込み、カスリを取る。頭いいでしょ。でも、備品なんかにしても、ヤクザ系の業者なんかよりもよっぽど安いから、店側にも喜ばれているよ」
■エステの9割が個人営業だから
税金を納めている店は皆無
開店後のランニングコストはどんなものか。再び陳さんの話に耳を傾けてみよう。
「一番大きいのは、人件費です。基本的に女の子への支払いは固定給ではなく、完全歩合制。以前は、店と女の子の折半が普通でしたが、最近は女の子不足なので、売り上げの6~7割を女の子に渡す店も増えています。うちの店の場合、いまも折半にしています。月の売り上げが400万円なら、女の子(4人)の取り分が200万円。その他家賃、水道・光熱費、広告代など諸経費が約50万円で、店側の純利益は150万円といった感じです」(陳さん)
しかし、それだけ儲けていて、税金は払っているのだろうか。
「税金?数店舗規模のチェーン展開をしているような店では、最小限の額を申告しているみたいですが、エステ店の9割は個人営業なので、税金納めている店なんてないと思いますよ。毎日の売り上げなどはノートにつけていますが、1ヵ月で捨てるようにしています」(同)
このように、日本人の客から吸い上げられたカネは、中国人のエステ経営者、中国人エステ嬢、中国系コンサル業者の間をグルグル回るだけ。日本には1円も落ちない構造ができあがっている。
中国エステを舞台に生み出される巨額マネーは、在日中国人社会の暗部に巣食う“闇マネー”の一つといえる。