第十九章 出版

投稿日:2008/10/28 更新日:

出版社への売り込み

 こうして事務所に閉じこもり、3月の中旬までになんとか24名の人生逆転物語(+約50人の短い実例)をまとめました。本にするには充分な量です。実は24人中、10名前後の物語はすでに書いていました。過去3年、毎年3ヶ月程度で本を書くのに挫折してましたが、気づけば10人分は溜まっていたんですね。三日坊主、三ヶ月坊主、三年坊主と挫折しても、また再開継続すれば「チリも積もれば山となる」ですね。

 しかし、全体の構成がどうもうまく行きません。作家・中島孝志さんの「40歳からどう書くか」という<本の書き方本>を読んだり、市民バンクの片岡さんや竹田先生からもいろいろとアドバイスをもらいました。が、唸るだけで前に進めない日々が続きました。

 そんなとき、横目で見ていた妻が「私が考えてみるわ!」と一気に全文を読んでくれ、サラサラと目次を書いてくれました。これが突破口になり、全体の構成・目次が決まりました。人物伝の寄せ集めですが、なんとか形になりました。

 次は出版社への売り込みです。コネや紹介はなし。インターネットや本屋で調べた情報を元に約30社をピックアップし、企画と要旨と原稿の一部を一気に送りました。ダメモトで、まさに当たって砕けろですね。

 反応は意外に早く、約2週間の間に、約半分弱の出版社から次々に「今回は見送ります」「残念ですが・・・」と落選の通知を受け取りました。あとで聞くと、無名の新人が売り込んだ場合、大半の出版社は原稿を見もせず、断ることが多いそうです。大手出版社になると毎日数十通以上の売り込みがあるらしく、一々原稿を読む暇はないと。そうでしょうね。本の原稿を読むのは大変ですからね。

 ただ、原稿企画を送って1週間後、日本実業出版社の編集担当の方から「原稿受け取りました。個人的には興味あります。しかし、福岡の無名起業家ではインパクトに欠けます。残念ですが、又の機会に・・・」とメールをもらいました。

 東京の出版社にとっての難点は、今回の本の内容が福岡の無名中小企業であること。中には「やずや」や明太子「ふくや」とか仏壇「はせがわ」など、全国的に名が売れた会社もありましたが、大半はほとんど無名の社長です。

 出版化はやはり無理か・・・・。そんなとき、竹田先生から「もし出版で資金が足りなければ協力します」とFAXをもらいました。ビックリしましたね。自費出版のようにある程度金を出せば出版社もリスクが減るため、出版OKの可能性が高まりますよと。

 自費出版の場合約300万円かかり、もちろん私にはそんな余裕はなかったし、竹田先生から借りるつもりもなかったのですが、なんとも有り難い申し出には感激しましたね。友人知人へお金を貸すというのは、様々な意味で大変な決断がいりますからね。

当時の私の日記より 2002年

●3/22さあ、何をやるのだ、栢野。もうお金はない。借金・出資金を考えると実質ゼロだ。まだ、手元に数百万円あるが、それはないのだ。そして、何をせずトモ、毎月70万円は事務所経費や生活費で消えている! 今は月の売上は100万円もない。借金は300万円。ヤバイぜ。しかし、上のやつはどれも元手がかからない。自分の頭と腕と体だけでできる。考えてみれば凄いことだ。どれも仕入れがない。商品の在庫を抱えることはない。やればできる。去年、職安リストを元に飛び込み訪問をした。わずか1カ月程度だ。しかし、それで不動産総合センターを受注。この1年で140万円・粗利20万円を受注した。今後もこの売上は伸びるとして、毎年100万円の受注があるとしたらデカイ。こういうお客さんの積み重ねだ。不動産総合センターは年間7回のお客。他に、大成はほぼ毎月。ホームテックは年に8回くらい。他に年に1回、年に5回、年に10回、そういう客を見つけて積み重ねだ。ダスキン伊藤を見よ。2週間に1回で3000円かもしれないが月で6000円。年で7万円。こういう客を150件で1050万円。彼は実際の年収は約800万円だから、売上は2000万円くらいか。1件当たり数千円の積み重ね。まさにコツコツコツ。素晴らしい。

●3/23さあ、栢野。やるんだ。行動だ。何をやるか。求人広告に絞るか、販促広告もやるか。チラシか。パンフか。コンサルや講演や本の執筆などは後回しだ。あれやこれやはできない。絞る。できることは何だ。広告。何が問題だ。自分一人で営業からコピー・制作までやっていることか。じゃあ、制作は外注しろ。いや、私の売りはコピーだ。コピー一つで広告効果は変わる。それは自分しかできない。職人だ。職人に徹する。うーん、どうしようか。自分ができる範囲でやる。ターゲットを絞る。自分にしかできないことは何か。オンリーワンは何か。栢野のオンリーワンは。やはり、コピー力。文章力。取材力。人を動かす文章力。文章で人は動く=集客・求人。人が集まる求人広告。人が集まる販促広告。コンサルタント。アドバイス。何かの販売。何だ。俺ができることは。ビスカスのような税理士紹介業。ジャパンアーツ。営業力のない作家と、仕入れ力のない百貨店。この双方をつなぐ商社。そして、百貨店の売場で販売する力。今の求人や販促広告の分野では、競合が多い。何か、競合が少ない分野は。そして、50代になってもできる仕事は。俺の過去の成功体験は。

ダメ元で40社にアタックし、出版決定

 さて、今回の本は様々な起業家が辿った人生の軌跡をまとめたものですが、私自身が一番知りたかったのは、起業家の人が今の仕事、天職にいつどういう経緯で出逢ったか。人は一体、どうやって天職に巡り会うのかと。それは43歳にもなって天職がわからない自分にとって大命題でした。

 そこでインターネットで「天職」というキーワードで本がないか検索してみました。すると、意外に数は少なかったのですが、ある出版社から「私の天職」という本が出ていました。それは毎日新聞社の連載企画で、零細自営業の方々の人生をまとめたもの。奇遇なことに、その著者である記者の方は小倉在住、出版社も福岡でした。

 中島孝志さんの本に、原稿を売り込むなら同じテーマの本を手がけた出版社・編集者は話が通りやすいとあったのと、地元福岡で自転車で10分だし、電話帳で電話番号と住所を確認し、持参しました。

 その出版社は「石風社」といい、福岡では老舗の1社。アフガン難民の救済活動やっている中村哲著「医師・井戸を掘る」が有名です。飛び込みにも関わらず、担当の藤村さんが面会に応じて頂き、企画の概略を話して原稿そのものも全部渡しました。ざっと読んでみましょうと。

 そして1ヶ月後、藤村さんから思いがけない解答をもらいました。「出版しましょう。ただし、栢野さんの方でどのくらい捌けますか」と。つまり、自費出版ではなく、買い取り契約でもないが、初版3000部の半分は自分でも売れますか?あなたも一緒に売るんですよという覚悟を迫る感じでした。

 無名で地方出版の場合は自費出版が多いと聞いてましたので、やった!と思いました。石風社は福岡の出版社なので書店ルートでは福岡が中心。ネット以外は全国発売ではないのが少し残念でしたが、最初の売り込みで本の出版が決まるのは奇跡に近い。とりあえずの結果が出て、ホッとしました。自分の本が出る。信じられない感じでした。

 こうして正式な回答をもらい、本の清書作業に入りました。細部は大ざっぱな部分も多く、かつ、書いた約25人の社長に正式な了解とチェックをしてもらおうと、2002年4月から6月まではその作業に追われました。

 原稿の書き直しが一段落したある日、インターネットでフォレスト出版のHPを見ていると、本のプレゼント企画がある。希望の本を選び、アンケートに答えたあと、「ご意見欄」があったので、私はあることを書きました。

 実はその1年前、フォレスト出版の太田社長が福岡の竹田先生のところへ訪問。竹田ランチェスター戦略の入門編を、起業目指す人・経営初心者向けに書いて欲しいという執筆依頼でした。先生の配慮で私も同席させてもらいましたが、竹田先生は初心者にはあまり書く気がなく、以前、中経出版から出した「独立を考えたら読む本」があるから、それを適当にリライトでもして下さいと、太田社長も了解したようでした。

 私はそのことを思い出し、「ご無沙汰しています。あれから1年経ちますが、例の竹田ランチェスター入門本はどうなったんですか?早く出して下さい」と意見欄に書き、メールをしました。すると数日後、太田社長から返信がありました。

 「竹田先生の本は準備しています。既刊本を元に考えています。ご協力をお願いします。(そうだ、栢野さん、竹田先生のリメイクライターしませんか?)」

奇跡!2冊目の本が決定

 リメイク?つまり竹田先生のゴーストライターとして、新「独立を考えたら読む本」を書かないかということです。ランチェスター戦略は難しいが、竹田ランチェスターの入門編というか、独立起業を目指す人向けなら、俺にも書けるかもしれない。竹田先生とは約10年のつき合いだし、セミナーも10回くらい主催しているし、竹田先生の教材テープもたくさんもっている。事例はベンチャー大学他で数多く知っている。

 竹田先生のゴーストライター。しかも初心者向けなら俺にも書けるかも。俺がやるべきことだ。「でもゴーストかぁ。俺の名前は出ないのか。どうしようかなぁ」とかなんとか言ってると、横にいた妻が「竹田先生のゴーストならあなた以外にいないでしょ。それにうちはお金がないの!ゴーストでもなんでもやって!」との悲痛な叫び。

 その声で目が覚めましたね。そうだ。悩むなんて贅沢だ。ゴーストライターはいくらもらえるかわからないが、200P前後なら数十万円、70万円くらいもらえるかもな。わからんけど。とにかくもう金がない。四の五の言わず、仕事としてやるのだ!よしやろう!と、竹田先生に了承を求めるFAXを流そうと思いました。

 そしていざ、FAXボタンを押そうとしたその瞬間、ある考えが脳裏を横切りました。今回の本は東京の出版社だ。ということは全国発売になる。これはチャンスだ。ゴーストではなく、共著の形にできないだろうか。

 私はFAX用紙を書き直し、「・・・これこれこういうことでフォレスト出版からゴーストライターをしないかと声をかけられましたが、できたら共著にさせてもらえませんか?」と文面を書いてFAX。

 すると、5分も経たないうちに、ピー♪カタカタ・・とFAXが鳴りました。見ると竹田先生から早速の返信。

「・・・共著どころか、あなたが書いたことにしなさい。私の名前はどこかに小さく出るだけで充分」との返事。

 妻と二人で飛び上がって喜び、すぐにフォレスト出版に連絡すると、「共著、いいですよ。ただし、竹田メソッド・理論ですから、竹田先生の名前が大きく出て、栢野さんの名前は小さくなりますが、それでもいいですか?」と返事が。

そんな、名前が出るだけで有り難い。やった!俺の名前の入った本が全国発売になる。しかも、福岡の本と合わせて、一気に2冊も出ることになる。これは夢ではないのか?

 出版社の都合で、この竹田先生との本は11月に出すことに。〆切は10月だから、実質3カ月半しか時間がない。でも大チャンスだ。頑張ろう!

 最初に決まった「バカ社長の天職発見物語」は出版社が「いつでもいいですよ」と〆切が決まっていなかったのに加え、掲載する社長の原稿チェックや、掲載そのものに難色を示す社長が続出で進行がストップ。当面は竹田先生との共著に絞ることにしました。

-ルサンチマン

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